【本】生命とは何か〜複雑系生命論序説

【本】生命とは何か〜複雑系生命論序説
金子 邦彦 東京大学出版会 みどり図書館で貸出
p.257 
多細胞生物では、初期の細胞は他のすべての細胞をつくる能力(全能性)をもつ。発生過程が進行していくと、その細胞からすべてはつくられないが、ある範囲内の細胞をつくれる「多様性」をもった細胞が分化してくる。これは幹細胞とよばれる。たとえば造血幹細胞は、血液にあるすべての細胞に分化する能力をもつ。さらに、そこからもっと狭い範囲の細胞しか作れない細胞が分化してくる。このような階層を経て、最終的には自分しかつくれない、決定した細胞へいたる。こうして分化可能性は不可逆的に減少していく。

 多細胞生物では、細胞は多くの異なるタイプへと分化している。初期の細胞はすべての細胞へと分化する可能性をもっており、これは全能性(totipotency)をもった細胞、ES細胞(胚性幹細胞)といわれている。

p.260
1975 ガードン カエルの体細胞クローン
1996 キャンベル、ウィルマット 羊ドリー哺乳類クローン

哺乳類などでは、幹細胞は多くの組織でだんだん失われることが多い
一方無性生殖をおこなう生物では、このような幹細胞をもとに個体がつくられる場合もある。たとえばプラナリアは切ってもそこから全体を再生する能力をもっている。体のどこにでもある割合で幹細胞が存在している。[Baguna et al。1989]イモリの肢やトカゲの尾が再生できるのに対し、人の指はできない、こうした違いにも幹細胞の存在は関係しているとも考えられている。